読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

きみもリトルスター

星の数だけ吐き出したい気持ちがある @com_atcom

さあちゃんという女性

f:id:namiolist730:20170423000407j:image

  

さあちゃんはずっと結婚しなかった。

 

 

 

 

 

中学生の時に、初めて彼女をみたときは、大人っぽい子がいるなぁとだけ思った。

 

学校の近くに住んでいて、笑うとえくぼができて、あはははっていう大きな笑い声のする女の子だと知ったのはずっと後。

 

 

彼女が学校の人気者になったくらいのとき。

 

 

周りに人がたくさん集まって、「さあちゃん」「さあちゃん」と呼び止められて、彼女も嬉しそうに返事をしていた。

 

 

きっと女子からの嫉妬も同じぐらい注がれたであろう彼女の毎日は、キラキラしているように見えた。

 

 

 

 

かろうじて同じ高校に通えたはいいものの、彼女には話しかけることができないまま、やっぱり高校でも人気者になる彼女を遠くから見つめていた。

 

そんな彼女が、どこのどいつの影響かは知らないが、学校のヤンチャなグループと付き合うようになっていったのは、関係ない身とはいえ、とてもショックだった。

 

 

 

綺麗な髪は金色に変わり、眉毛も整えて、同じように身なりを派手にした連中と肩を並べて帰る彼女は、前よりもっともっと知らない人だった。

 

 

彼女の周りには確かに人がたくさん集まったが、それも変わった。

 

 

 

高校を卒業してから、彼女がどうなったのかは知らない。

きっと就職先も、進学先も決まってなかったはずだ。

地元に残るのかどうかも、わからない。

 

 

 

きっと彼女は知らないと思うけれど、こっちの世界では彼女はいつも毎日の中に存在し続けていた。

 

 

 

それから何年もたって、何年も何年もたって、あの頃のことも「そうだった?」と曖昧になるくらい年月を経た。

 

 

彼女のことは、思い出さなくなった。

 

 

 

 

久しぶりに地元に顔を出すことになった際、友人の指定してくれた居酒屋に向かうことになった。

 

 

綺麗な茶色い木枠に、すりガラスのはめこまれた引き戸。頭があたるかどうかくらいの長さの小さな暖簾。

 

 

中にはふくよかなおばさんがカウンターに座る自分と似たり寄ったりのおじさんに向かって笑いかけていた。

 

友人が気づいて手を振ってくれた。

 

 

おしぼりは、すぐにでてきた。

 

 

 

「ちょっとまってね〜、もう、うちはおしぼりは早いんだけど注文が遅いのよ、許してね」

 

と、そう言い、あはははっと笑った。

 

 

 

居酒屋「さあちゃん」